第19段 選挙運動とボランティア

‐私の小さな体験から‐

 選挙に勝つには何が必要か分かりますか?
 そうですね・・・。地盤、看板、鞄ですか。
 その通り。よくお分かりですね。
 地盤は候補者の支援組織です。業界団体、学校の同窓会、町内会、地縁血縁いろいろありますが、基礎票が推定できます。
 看板。候補者の知名度です。ある意味選挙も人気投票です。候補者の顔が知られていないと、「この人誰?知らない」となり、票は入りません。
 最後に鞄です。一番重要な要素です。現金が無ければ選挙運動ができません。費用は幾らかかるかは、どの選挙に出るかによって人それぞれでしょうが、最低限入る供託金を例にすると、衆議院が小選挙区300万円、比例代表300万、重複立候補すると600万円。参議院が選挙区300万円、比例代表300万円。知事が300万円。市長が100万円。県会議員が60万円。市会議員が30万円となっています。これにポスター代、選挙カーのレンタル代、運動員の人件費、食事、通信費等々いくらでも膨れ上がっていきます。最低でも国政選挙では数千万円、地方選挙でも数百万円が必要だと言われています。
 選挙に関する言葉にこんなものがあります。井戸塀選挙。選挙に出て落ちると、その候補者の家には井戸と塀しか残らない、という意味です。2世3世の世襲議員が幅を利かせるのも仕方ないことかも知れません。
 さて、今回は私の小さな選挙運動体験から、無償の選挙協力がどれだけ陣営にとってありがたいかを書いてみたいと思います。
 今から20年程前の話になります。中学の同級生のK君が市会議員選挙に立候補しました。彼は中学2年生の時に一宮から小牧にやって来たので、地盤看板は全くありません。会社員なのでもちろん鞄もありません。そんな状況からのスタートでした。
 先ずは講演会作りからです。中学の同窓会名簿を頼りに、講演会入会依頼のハガキを出しました。私も悪筆ですが、K君も私に劣らず悪筆です。綺麗な字を書いてくれるスタッフがいたら、どんなにありがたいかつくづく思いました。そんな悪筆での依頼に、快く賛同してくれた同窓生の方々には大感謝でした。
 土日はポスティングと戸別訪問です。家を一軒一軒回って政治信条を訴え入会をお願いします。残念ながら返事はNO!会ってももらえません。当然の話ですよね。見ず知らずの人間がいきなりやって来て、政治信条に賛成しろなんて、どだい無理な話です。何10軒と続くと心が折れてきます。そんな時に、偶々話を聞いてくれる家に出会うと、地獄に仏、神に出会ったような気になります。困難は神が私の信仰心を試されているんだと考えて行動できる宗教信者の協力は、絶対にありがたいものだと想像できます。
 選挙戦が始まりました。先ずはポスター張りからです。初めての選挙戦では人手が足りないので、候補者自らもポスターを貼りました。ポスター1枚で票が入るわけではありませんが、掲示板に候補者のポスターが張ってないと、候補者の力、存在感の無さを印象付けることになりました。泡沫候補なんだと。
 初陣の結果は下から3番目でした。
 4年間K君も勉強しました。町内会の役員をやったり、いろいろな会合に積極的に参加したりして、顔と名前を覚えてもらえるよう一生懸命に努力しました。
 結果は現れて来ました。町内の代表として推薦しても良いかな、という意見まで出て来ました。残念ながら推薦は得ることが出来ませんでしたが、使わない離れを選挙事務所に提供してくれる人や、いろいろ雑用を手伝ってくれる人も出て来ました。
 選挙運動を通じて知り合ったタウン誌の編集者から、ウグイス嬢の紹介もありました。さすがはプロです。彼女が乗ると選挙カーの雰囲気が一変しました。
 政治家の為書きも事務所に飾ることができるようになりました。そうすると、不思議なことに、事務所に出入りする人の数も増えて来ました。当然それに伴い出費も増えていきます。鞄だけはなんともなりません。
選挙戦最終日です。桃太郎とか大名行列といわれるものが始まります。襷掛けをした候補者を先頭に、幟をもった大勢の支持者が、最後のお願いに地盤を中心に街を練り歩きます。
 K君の陣営はもともと支持者が足りません。少ない人数での大名行列ではみっともありません。見かねた近所のおばさん達が、飛び入りで参加してくれました。その中にある宗教の信者の人がいたので、その関係の人々も行列に参加してくれました。枯れ木も山の賑わい。行列の参加者が年配者ばかりなので、逆に、お年寄りに優しい候補者と印象付けることも最後に出来ました。
 結果は?次点の次点でした。良く頑張りました。地盤、看板、鞄のないところから始めた選挙でした。それが次点の次点です。誰か選挙違反で捕まれば、繰上げ当選できる位置です。本当によく頑張りました。
 地盤を作るにも金。看板を作るにも金。人とお金がないと大変苦しいのが選挙です。そんな状況下で、神や仏への信心の下、無償で選挙運動を手伝ってくれる存在はありがたいものです。組織の上は何を考えているか分かりませんが、現場はとても助かります。だからこそ、手伝いに入っている人がどんな組織の人か、しっかり調べてもらいたいものです。清く正しい選挙であるために。

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