第16段 決断と覚悟

 『嫌われた監督』(鈴木忠平著 文藝春秋)。本のタイトルに引かれて、つい手が出てしまいました。中日の監督時代の落合博満の物語です。落合は球団側からチーム強くしてくれ、優勝させてくれ、と頼まれて監督を引き受けたそうです。落合の言動は全て契約を実行するためのもので、実情を知らない他人からは何を言われようと構わない、と腹を決めたそうです。その結果、実績を残しても嫌われてしまいました。嫌われるのを覚悟しての監督就任。並大抵の覚悟と決断ではありません。
 そこで、本を読んで、自分の人生の決断と覚悟をちょっと振り返ってみました。
 人生最初の決断はやはり高校受験でしょう。
 当時私が卒業した中学校では、地理的関係から、成績上の中から中の上クラスの生徒は、北区のN高校や地元のK高校を志願するのが一般的でした。本命がN、それがだめならK高校。これがスタンダードでした。もちろん私もN高校‐K高校でした。
 受験勉強もそれなりに一生懸命にやったつもりでしたが、勉強にむらがありました。どうしても好きな教科、得意な教科に力を入れて、他の教科はやや手を抜いていました。英数が出来ればそれだけで自己満足していました。
 当然成績は思ったようには上がらず、受験校は地元のK高校に決定。張り詰めていた気持ちがやや緩みかけた状態で入試当日を迎えます。英数は順調に試験を終えたのですが、理科には冷や汗をかく羽目になってしまいました。「落ちたらどうしよう」、という気持ちをもちながら結果発表を見に行った記憶があります。
 次の人生の決断は大学受験です。
 入学したK高校では楽しい高校生活を送りました。K高校は前身が旧制中学だったせいか、校則の縛りはわりと緩かったです。加えて、当時はやや左系の先生がわりといたので、よく言えば、生徒の自主性を重んじる。悪く言えば、ほったらかし。そんな雰囲気でしたので、授業が自習になると、学校を抜け出したりしていました。当然学校へ戻ったら生徒指導部へ直行。指導部の先生から、ありがたい話を何度も何度も聞かされました。
 そんな状況なので成績も下降線。中の下位まで下がってしまいました。進路相談で「行ける大学などありません」と言われ、やっと目が覚める有様でした。自覚のない受験生の見本です。同じような状況でも、自覚のあった友人の何人かは、現役だ、信州、岐阜、愛教大に合格しました。中には三浪してまでして名大に進んでいった執念の鬼もいました。
 で、私ですか。一浪してなんとか日大に入ることが出来ました。最近、理事長が背任や脱税容疑で世間を賑わしているあの大学です。私が入学した頃は、誰でも入れる三流大学と言われていました。それが卒業して何十年も経つと、大学のランクが上がってビックリ。早慶、MARCH(マーチ、明治、青山、立教、中央、法政)、日東駒専と第三グループに入っているのにビックリです。
 第三の人生の選択は、卒業後の進路です。
 大学ではそれまでと違って一生懸命に勉強しました。ゼミ(研究室)に入ろうと決めた2年生になってからは、図書館と下宿の往復だけの日々が続きました。勉強の甲斐があって無事入室を許され、1年が経ち後輩ができると、指導教授や助手の先生から、後輩の面倒を任され、大学に残ることに決めました。同期の者が、A社の筆記試験はどうだった、B社の面接はこうだった、と喫茶店で情報交換する側で、辞書を片手に原書と取っ組み合いをしていました。
 無事合格。大学院生は学部生と違い、一応研究者の一員の扱い。自分の机が与えられ、書庫への出入りも許され、学問の世界に浸ることができた幸せな2年間でした。
 2年が経ち、自分としてはこのまま上の課程に進みたい希望を持っていましたが、体調を崩し家に帰ることになりました。さて職はどうする。たまたま取っていた教員免許のおかげで、高校の教師になりました。
 南区にある男子校のD工業高校(現在は男女共学のD高校)で3年余りお世話になり、その後は昭和区にある男子校のN工業高校に30年以上お世話になりました。
 通常ならその間に、正規の教員になろうと採用試験の勉強をしたり、伝を使っていろいろ就職活動をするのですが、そのような気になかなかなれず、今日まで教員生活を送って来てしまいました。
 長い人生、人はいろいろな状況において様々な決断をします。その決断は、その人において全て正解だと思います。ただ、こうすれば良かったのに、という思いが残るとすれば、それはその決断に覚悟がちょっと足りなかったのかも知れません。
 これからの人生、悔いのない選択ができるように、より一層の覚悟を持って決断していきたいと思います。

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