第20段 三苫の1ミリ

 アルゼンチンの36年ぶりの優勝で終わった、FIFAワールドカップカタール大会。私が知っているサッカー選手といえば、三浦カズ、ラモス、地元グランパスでは楢崎、小倉といった、Jリーグ発足当時の選手ばかりなので、最近の選手はよく分かりません。それであまり興味がなかった今回の大会ですが、大会が始まり、日本チームの活躍を耳にするようになると、テレビから目が離せなくなりました。
 予選で日本が所属したEグループは死の組と言われました。過去に優勝経験があるドイツ(4回)、スペイン(1回)と同じ組になってしまいました。勝てるとするとコスタリカだけ。1勝2敗で予選敗退。運がよければ1勝1敗1引き分け。そんなところが世間の本音だった筈です。
 ところが日本チームは、ドイツとスペインを相手に、奇跡を起こしました。前半先制され圧倒的にゲームを支配されながらも、後半に立て続けにゴールを奪い、逆転勝利してしまいました。ドーハーの歓喜と呼ばれる奇跡です。
 奇跡を起こすには、人を魅了するような素晴らしいプレーが幾つも必要です。ドイツ戦の浅野選手とスペイン戦の三苫選手のプレーはその象徴的なプレーだと思います。
 浅野選手のシュートは綺麗でした。後半83分。相手から奪ったボールが、ロングパスで浅野選手に送られます。後方から来るボールを、浅野選手は一瞬振る返っただけで、柔らかいタッチで足で受け、相手選手と競りながら矢のようなゴールを放ちました。とても美しい逆転ゴールでした。
 三苫選手のプレーは人の心を打つプレーでした。後半6分。堂安選手のクロスが流れ、ゴールラインに近づきました。前田選手が追いますが届きません。もうダメかと思った瞬間、三苫選手が走りこみ、伸ばした左足でクロスを上げました。ボールはゴール前に詰めていた田中選手に渡り、スペインのゴールネットを揺らしました。
 ここでゲームが止まります。三苫選手が追ったボールが、ゴールラインを割ったかどうかの審議です。見る角度によっては、ボールがラインを越えていたからです。VAR(ビデオアシスタントレフェリー)の映像解析の結果、ボールはほんの僅かですが、ラインの白線上にありました。三苫の1ミリの瞬間です。ゴールは有効と認められました。逆転です。日本中が歓喜に沸きました。
人は必死にボールを追いかける三苫選手の姿に心を動かされました。良い結果が出ることを信じて、諦めずに全力で努力する。胸を熱くするプレーでした。
 人は知らずしらずにいろいろな事を諦めて生きて行きます。もう少し努力すれば物になったかも知れないのに。出来そうで出来なかった、あの時のもう少しの努力。私にも幾つかあります。
 中学時代。英会話教材でした。学校の方から来ました、と言ってセールスマンがやって来ました。会社名はグローリア?そんな名前だったと記憶しています。カセットテープに自分の声を吹き込み、ネイティブの発音と聞き比べて練習を進めるものでした。一ヶ月ぐらいは熱心にやった記憶があります。だんだん飽きてきて、いつの間にか押入れの肥やしになってしまいました。
 高校時代。ギターでした。ラジオの深夜放送が流行り、フォークソングに熱中していました。吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる、チューリップ等々。彼らに憧れてギターを手にしたものでしたが、コードがなかなか押さえられず、情熱も自然消滅。
 大学時代。英字新聞の購読でした。インテリゲンチャを目指して英字新聞を週刊で取りました。辞書を片手に一生懸命に読んだんですが、1面に目を通すだけで精一杯。そのうち積読になり止めてしまいました。
 せっかくの決意も努力が続かなければよい結果は生まれません。凡人である身には、人に感心されるような努力はできません。どうしましょう。
 何かの本に書いてあった記憶があります。ゆるい努力の継続。三日坊主の積み重ね。嬉しい表現ですね。ゆるい努力なら出来そうです。三日坊主も2回続けば6日間続けた事になります。ゆるい努力の積み重ね。三日坊主の積み重ね。素晴らしい座右の銘です。

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