第9段 今が辛抱のしどころ

-ワクチン接種が始まる-

 北海道570人、東京684人、愛知394人、大阪309人、沖縄240人。今日(5月28日)の朝刊に載っていた、新型コロナウイルスの新たな感染者数です。緊急事態宣言も3回目が発令中です。しかし、なかなか思うように感染者数の数字が減りません。1年前と比べると、1桁、いや県によっては2桁も違う数字かもしれません。
 国民がこれだけ自粛生活に協力しているのに、どうして思ったように数字が減らないのでしょうか。自粛疲れに自粛慣れ。1年間のマスク生活から解放されたいですよね。
 政府の実効性の上がらない政策にも一因があるかも知れません。社会のリーダーと見なされる人々の、無責任な発言や行動には、呆れてものが言えません。「率先垂範」「隗より始めよ」という言葉を、彼らには送りたいです。
 現在の世界の新型コロナも感染者数はおよそ1.6億人(多い国としては、米国約3300万人、インド約2500万人、ブラジル約1500万人、仏国約590万人、露国約490万人、英国約440万人)。この数字を世界の人口約78億人で割ると、約2%になります。50人に1人が罹ったことになります。マンモス校なら1クラスに1人は必ず感染者がいることになります。恐ろしい数字です。正真正銘パンデミックです。
 今回と同じように、感染症の大流行は、社会に大きな影響をあたえことがあります。過去にどんなことがあったでしょうか。
 先ずは思いつくのはペスト(黒死病)です。ペストの流行によって中世ヨーロッパは大混乱に陥り、大変革を迫られました。
 14世紀中頃ヨーロッパでは、フランスの王家交代(カペー朝からヴァロワ朝)を口実に、イギリス(国王の母がカペー朝出身)とフランスは100年に亘る長い戦争をしていました。戦争により、農地は荒れ生産力は落ち、人々は苦しい生活を強いられ、あちこちで農民の反乱も起きました。
 そのような状況の中でのペストの流行です。当時のヨーロッパの人口の3分の1から3分の2に当たる2000万人~3000万人の人々が死亡したそうです。その結果、これまでの経済基盤でもあり社会基盤でもあった荘園制が崩壊し、封建領主の没落が始まりました。しかし、これと反比例するこのように、王権が伸張し、ヨーロッパは中央集権国家の道を進むことになりました。
 16世紀に猛威を振るったのが天然痘でした。天然痘によって南アメリカにあった二つの帝国がこの世から姿を消しました。
 16世紀になると、スペインはアメリカ大陸侵略を始めます。この時に不幸にもアメリカ大陸に持ち込まれたのが天然痘でした。
 スペインは二人の男を南アメリカ大陸に送り込みました。コルテスとピサロです。コルテスはアステカ帝国を、ピサロはインカ帝国を征服しましたが、数百人規模の人員で一つの帝国が滅びるわけですから、凄まじい勢いで流行したことが想像できます。
日本では奈良時代に天然痘が大流行しました。天平の疫病大流行と言われています。新羅との交流の過程で日本に入って来たと考えられています。
 当時の人口の25%から35%に当たる100万人から150万人が死亡し、都でも藤原不比等の4兄弟が相次いで亡くなり、政治が止まってしまいました。
 地獄の出現です。奈良の東大寺大仏は、このような状況下で、聖武天皇が疫病平癒を祈念して建立したともいわれています。
 20世紀初頭に猛威を振るったのがインフルエンザでした。当時はスペイン風邪とも呼ばれていました。発生源でもないのにスペインとしては迷惑な話です。
 インフルエンザは第1次世界大戦中に流行しました。第1次世界大戦は1914年に始まり、1918年に終わりましたが、インフルエンザの流行は1918年からです。前年から参戦したアメリカの兵士が、ヨーロッパの戦場に持ち込んだと考えられています。
 感染者数約5億人、死者4000万人から5000万人と言われています。これでは徴兵も出来ません。インフルエンザが戦争終結の遠因になったとしたら皮肉ですね。
 日本でもワクチン接種がやっと始まりました。アメリカ(接種率47%)やイギリス(接種率54%)ではワクチン接種が進むにつれて、感染者の数が激減しています。6月中には高齢者の接種が終わり、続いて一般の国民の接種が始まります。日本ではまだ3%という低い数字ですが、ワクチンの効果は大いに期待できます。今が正念場。誘惑をグッと堪え、3密を控えましょう。そうすれば晩夏、秋の便りが届く頃には、胸一杯新鮮な空気が吸えるような気がします。元気な笑い声も街に戻ってくるでしょう。秋の行楽を楽しみにしながら、辛抱辛抱。

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